「っあ゙―――!!!」

「…なんだよ」

「なんだよ、っじゃないわよ!!なにその腕…!!」

「ま、まぁいつもの如くぶっ壊れたっていうか…」

「なに言ってんの?!自分で壊したんでしょこの阿呆!!」

「痛っ…そんな毎回殴るなよ!!オレが壊れる!!」

「だったらいっそ壊れなさいよバカ!!」

「あ゙ぁ?!」

いつもと同じ朝。

いつもと変わらぬ朝食風景。

ただいつもと違うのは、

この馬鹿が連絡もいれずに帰ってきたってことだけ。

しかも機械鎧までご丁寧に壊してくれて。

あぁもう本当…この馬鹿は。












Desire













「毎回毎回どこで壊すわけ?」

「どこだっていいだろ」

「何?もう寧ろ機械鎧壊すのが生き甲斐なわけ?

へぇそうそりゃあ良い趣味してるわねぇアンタ」

「んな馬鹿がいるかよ」

「私の目の前にいるのがその馬鹿な気がするんだけど」

「……」

「もう最低。折角丹精込めて作ってるってのに…」

「あーもー…ごめんってば」

「謝って済む問題じゃないの。わかる?」

「……」

「…だって、この前修理したばっかりじゃない。

一体どんな旅してるのよ、アンタらは…」

壊れた機械鎧を取り外しつつ、そう言う。

ヒビ入ってたり欠けてたりするパーツが多くて、もう初めから

作り直すしかないみたいで、今日も徹夜か、なんて溜息をついたとき。

「…ごめん」

「!」

済まなさそうな、少なからず真剣な表情で言われて言葉に詰まった。

だってそんな風な顔するの、滅多に見ないんだもん。

言いすぎた、かなぁ…。

でも私の言い分だって正しいはず。そう、一理あるのよ。

だから尚更今の状況が苦しいわけで…。

「な…に急にマジになってんのよ。良いってば別に」

「…でも、ホントごめん」

「……」

ワザと壊す馬鹿なんてそういやしない。

エドだって、少なからず私に罪悪感を感じてたはずなのに、

私は私の視点からしか考えてなかった。発言しなかった。

もう、今更後悔したって遅いけど。

―――――――私、自分でエドを傷つけてる?

「あ……その…私も、ごめん」

「え?」

「エドだって壊したくて壊したわけじゃないのに、私、先刻…」

「いいって別に。オレが悪いだけだから」

「でもっ…」

「わっ…んな泣くなってば。気にしなくて良いから」

私も知らないうちに涙が滲んでて、ちょっとびっくりした。

子供をあやす時みたいに頭を撫でられたけど、

そんなことされても私の中はまだモヤモヤしたままで。

簡単に言えば…あの緑色の棘のあるボールを投げたいくらい。

っていうか、そのモヤっとボールを十個は投げる自信ある。否、投げる。

「泣いてない…」

「はいはい。わかったからもういいってば」

「……」

「正直ちょっとキツかったけど…気ィつけるから」

な?って。

エドがそんなこと言う必要ないのに。

本当、私は…。

「馬鹿…」

「え…」

「馬鹿よホント…」

「だからごめんってば」

「違うの。私のこと」

「は?」

「いっつも帰ってきたらエドに迷惑かけてるもん、私。

…ごめんね?嫌だよね?」

「何言って…」

「今まで気付かなかった。私、自分でエドを傷つけてた、って。

だから本当…ごめんね」

唯一此処が安らげる場所かもしれないのに、私は

その場所でエドを苦しめていたのかもしれない。

そう考えると、すごく悔しくて。

「別にウィンリィは悪くないから。寧ろありがたいっていうか…」

「え…?」

「そうやって怒ってくれるのは、心配してくれてるからだろ?」

優しい笑み。

久々に見たその顔に、しばらく視線が逸らせずにいた。

「家のないオレたちを家族同然に温かく迎えてくれる。

それってすげー贅沢なことなのに、いっつも急に帰ってきても

笑顔で"お帰り"って言ってくれるだろ?それは本当…感謝してるし」

ぽんぽん、と頭を軽くたたかれて。

「文句言いながらもちゃんと整備とかしてくれるじゃん。

流石オレの専属整備師、みたいな」

「…馬鹿」

「あはは」

今度は苦笑しながら、私を見つめて。

「それにさ、壊れてるのはオレの所為でもあるし。

だから、ウィンリィの言うことは正しいし、そんな謝ることじゃない。

そうだろ?オレが悪いだけ」

そうやっていつも自分を悪者にしようとするのは、


周りを巻き込まないようにするため?

それとも無意識のうちのことなの?

でも、どっちにしても。

「馬鹿…」

「お互い様?」

「…うん。お互い様よ」

額をエドの背中に当てる。


















ごめんね。ごめんね。

でも、きっと、これからもずっと

私はこの家に帰ってくるのを待ってるから。

だから、無理はしないで良いんだよ。


































すきだよ。だいすきだよ。




































「とか言って実は会う為に壊してたりして」

「え?」

「別に?独り言」