いらない いらない

こんないのちなんて いらない

えいえんのいのちなんて いらないよ

ただ ふつう で ありたいだけ

いらないよ こんなもの

だれか だれもいいから

わたしに いのちを

にんげんのいのちをください






























見た目が変わらないだけの、異質な自分。

普通に考えて異分子な自分。

この世界に存在していいのかさえわからないような

そんな危うい存在の自分。

「くだらない…」

とうとう中身まで感化されてきたか、と

苦笑交じりに雲ひとつ無い空を見上げる。

昔願った願い事は何だっただろう。

人間になりたい?

―――――――――――…なんで?

「人間なんてただ愚かなだけじゃんか」

銃の使い方を覚えればそれで命を奪い

片方で永遠の命を願い

生と死を繰り返して、それでもまだ。

「死ぬ為だけに生きてるようなもんだろ、人間なんて」

くだらない。

人造人間――ホムンクルス――として今生きている。

例え人で無いとしても、今生きていることには変わりない。

でも、何故人間ではない?

見た目も人体の構成物質も同じで、感情もあるというのに

何故自分達は、人と言われない?

『くだらないことを言いますね』

「! プライドか?」

『貴方らしくも無い。どうしたんです?』

「盗み聞きかよ…悪趣味だな」

『偶々聞こえただけです。誤解をしないで下さい』

「なんの誤解だよ」

姿の見えない奴に声をかけつつ頭を掻く。

「…誰だって想うことだろ?こんな命貰ったんじゃさ」

『貴方だから珍しいと言ったんです』

「…喧嘩売ってんの?」

『いえ』

立ち上がり、屋根の上から町並みを見つめる。



















人がいる。

建物がある。

花がある。

犬がいる。

食べ物がある。





















「この中でオレは…なんて言われるんだろ」

『…人、じゃないんですか』

「人ねぇ…一応人造人間だけど」

『そんなものです。見た目で判断しますから、初めは』

「そのうち気味悪がられるのがオチだな。それが面白いけど」

ケラケラと笑ってみせると、奴も軽く笑っていて。

そういえば心から笑ったことがあっただろうか。

いつもどこかに不安と恐怖、憎しみと哀しみが渦巻いていて

素直に喜べない。でも怒りだけは沸々と湧いてくる。

人間よりもタチが悪いと思う。

『そういえばグラトニーはどこです?』

「知らないよ。ラストのトコじゃないのか?」

『無駄にものを食べてないといいですけどね』

「言うだけ無駄だろ"暴食"にはさ」

『そうですね…"嫉妬"さん』

「っはー…、相変わらず態度でかいのな。さっすがは"誇り"って感じ」

『自尊心がある、と言ってもらえますかね』

「一緒だ一緒。面白いけど」

人でなくとも、恐れられたとしても

今こうして笑って、怒って、話しているのは事実だから

それを受け止めて生きていければ

それだけで十分だから。

「さーんきゅ、プライド。なんかテンション上がった」

『そんなこと言われるような事してませんが』

「そういう時は"どう致しまして"とかなんとか言ってりゃいいんだよ」

『…どう致しまして』

「よし。じゃ、オレはグラトニー捜してくるわ」

『えぇ。行ってらっしゃい』

「…はいはい」

地面を蹴って別の場所へと着地する。

この風を切る感覚が気持ちいい。







































「人間になりたい、ねぇ…」

くだらないと笑い飛ばしてきた願いも

叶うはずの無い、儚い想いも

「なれたらいいけどね」

今はまだ留めておけばいい

「叶えば嬉しいってだけだろうし?」

今はただ出来ることだけどすればいい。







































人造人間?人間じゃない?

それがどうした。

オレはオレとして生きてくだけだ。